幕末異聞―弐―
“ぎゃあぁぁあ!!”
あらゆる場所から聞くに堪えない悲痛な声が聞こえる。
二階から転げ落ちるように一階へと逃げてきた浪士たちは、仲間の悲鳴を聞いて罪悪感は感じるが、今は自分が生き延びることで精一杯だった。
「許してくれ…許してくれぇぇぇ…」
二階から脱出した浪士は口々に、お経を唱えるが如く残してきた仲間に許しを請う。
「そない謝りたいんなら三途の川で謝ればええ」
「…へ?」
――ドスッ!!
玄関付近の表階段を下りた浪士の耳には、女の甘い声が響いた。同時に、腹部から何か生暖かい液体が滴っているのを感じた。
「お…んな……っ」
「ふっ。よかったなぁ。刃が鋭いから痛くないやろ?」
「くッ…!」
女は勢いをつけて浪士の腹から突き刺した刀を引き抜く。体の何処にこんな血液が入っているのだろうか?と思わせるほど夥しい量の血が通路に流れた。
そのまま倒れ込み、うつ伏せの状態で絶命した浪士を冷たい目で見下ろす女。