六年一組、本紛失事件
「嫌です!」

 美紀子は手で顔を隠し、泣きだした。

「美紀ちゃん、泣かないで」

 と、言ったのは渋革ひとみである。クラス一のチビだ。一重まぶたで気の強よさは誰にも負けそうになく、よく男子と言い争いになっている。

「おいおい! 林、泣くな。決まったものはしょうがないだろ」

 いい加減、高基教諭もうんざりしてきたようだ。いまにも怒鳴りそうであった。

「先生、学級委員は安田さんがいいと思います」

 と、慶子が言った。

「私も!」

 続いて、ひとみ応戦である。
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