六年一組、本紛失事件
 再び前に立った小森と美紀子であった。

「じゃあ、他の委員も決めたいと思います。えーと、何、委員だっけ?」

 小森は美紀子に助けを求めるように、顔をうかがった。

「……図書委員から決めたいと思います。やりたい人は手を上げて下さい」

 と、美紀子は言った。

 図書委員の主な仕事は図書室の管理である。四年生から六年生の委員が交代で、本の返却日のハンコを押し、期限がすぎても返却のない本の催促をするのである。本好きにはたまらないが、そうでない場合は苦痛だ。

 誰も手を上げなかった。





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