彼と私の関係〜もう1つの物語〜
彼と出会った1週間後、兄から告知され私は呆然とするしかなかった。
母には告知せず隠し通したけど、本人はすでに自分の病気を知っていたようだった。
命の灯が消える寸前、枕元へ呼んだ私に
――『幸せになりなさい……奈央……』
そう言って微笑んだ。
次の日から、意識がなくなった母は3日間生死をさまよい、そのまま帰らぬ人となった。
――正直、実感がなかった……
生前、女手で子供2人を養うために始めた水商売。
メロドラマに出てくるような当たり前の成り行きだった。
母が経営していた小さな小料理屋は、そこそこ繁盛していた。