不器用な君等の唄へ

お姉ちゃんが流星に耳打ちしている。

傍から見れば、何の変哲もない恋人のよう。

「───…っ。」

不意に不安がこみ上げてくる。

今までなんとも思わなかったけど、お姉ちゃんて透子ちゃんに似てる。

…流星、好きになっちゃうかもしれない。

足が動かない。
二人の姿を呆然と見る自分がいる。

帰っちゃおうかな。

思考が“逃げ”の体制を取り始めた時。

「妃芽。」

名前を呼ばれた。

「またね。」

私と違ってとても綺麗な笑顔。

手を振るお姉ちゃんの意図は掴めなくて、ただふりかえしていた。



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