不器用な君等の唄へ


桜の花吹雪。

その中を歩くのは今日卒業する3年生。

校門に大きく『卒業式』と書かれた看板が出されている。

…卒業なんだ。

鞄の上に桜の花びらが乗って、目を細める。

入ってくる3年生は、どこか新入生とは違う輝きがあって。

大人びたその背中を私も追っていく。

寂しくて、苦しくて、どこか切なくて。

酷いと思ったり勝手だと怒ったり偉大さに感動したり…。

それは私たちの思い出にも3年生の思い出にもなってくれると良い。

桜の枝の間から見える青空に叫びたくなった。


教室に入ると、みんなソワソワしていた。

「あたし達が卒業じゃないのにね。」

あはは、と笑っているのは茉莉。


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