Wissenschaft vs. die Magie
魔に愛されし男、科学の申し子
突然喚び出された場所が、自分がかつて訪れた事もない場所だったら。

しかも透明な強化アクリル製ケージの中だったとしたら。

ケージなどと言えば聞こえはいいけれど、要するに檻の中だ。

普通の神経ならば目を見開き、己の置かれている状況に憤慨するなり動揺するなりしてもおかしくない。

だというのに、その銀髪、黒い外套の男は別段喚くでも叫ぶでもなく、しげしげと周囲の景色を見回していた。

「……」

その様子を、私は所長と共に顔を見合わせて観察する。

「八王子君、彼は…?」

「わかりません…」

ひそひそと囁くような声で、私は所長と話し合う。

時空転移装置は正常に起動した筈だ。

ならば必ず『何者か』をこの強化アクリル製ケージの中に召喚する筈。

なのに、召喚されたのはどう見てもただの人間だった。

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