知らなかった僕の顔
「これしかないんですけど…」


小ビンの中の残り半分の醤油を矢島さんに差し出した。


「あーっ…そっか。足んないな…」
矢島さんが、大げさに頭を抱えた。

「足りない…ですか」

「うん…煮物が食いたくて作り始めたんだけど、醤油切らしてんのに気づいてさぁ」


煮物を作るのにどれほどの醤油が必要なのか知らない僕でも、僕が持ってる量では足りないことは、なんとなくわかる。

「なんか…お役に立てなくてすいません」
残念そうにたたずむ矢島さんに言った。

「いやいや、こっちこそなんかね。そうだよなぁ、一人暮らしの学生が、大量に醤油持ってるわけないよね。男の子だしね」


気のせいだろうか…。
男の子だしね、と言った後の矢島さんの意味ありげな目付き…。


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