この汚れきった世界で...
命令
「ふあぁぁ...」
いつもと同じ朝だった。

そこら中から鉄だの薬品だの変な臭いがして、ブルドーザーか何かで物を壊すような破壊音が鳴り響いて、無理やり眠い目をこじ開ける。
この国に来たばかりの奴はきっと耐えられないだろう。俺だって慣れるのに半年かかったんだから。

いつものようクローゼットから今日着る服を探して着て、洗面所で顔洗って、食パン咥えてコーヒーを入れる。
一見普通の生活のように見えるが実際この国では殆どの奴らがこんな生活を送っている訳ではないと言っても過言ではない。むしろ俺の生活は裕福なんだろう。
こう見えても職はあるし、友達もいるし、も、もちろん恋人だっている。
風呂だってあるし、住む場所もあるし、食い物にもさほど困ってはない。


今日3067年5月3日。
今のこの国、ケイミアの政治は狂っている。
議員同士が団結しようとせずに個人個人の政治を行い、民間人を困らせている。
それに、政治が中心ではなく軍が中心に置かれている今、ケイミアに平和は訪れないだろう。
最近では米や独などの国々の兵士も軍に加わり毎日のように戦争が行われている。
最近では国外戦よりも国内戦の方が激しくなってきている。
「昔のケイミアは豊かだったのになぁ...」
こんなことほざいている俺の職も、平和をなくす元を作っているとも言える兵士なのだ。
なんだかんだ夢語っても、結局反逆することなんて出来ずに従ってただ死なないように働いている。


こんな世界で生きていたって仕方ないのに...なんて思いながら俺はテレビをつけた。見るのは勿論、国内戦の状況を報道するニュース。
「昨日は結構近かったのかぁ...ちょっと気を付けないとな」
いつどこで襲われてもおかしくないこの国を出て行かない俺も俺だなとぼやいてコーヒーを啜った。


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