雪花-YUKIBANA-
皿が勢いよくテーブルに置かれる。
けれどその音よりも、
自分の心臓の音の方が、僕には大きく聞こえた。
この料理……。
先に箸を伸ばしたのはコバだった。
大きな口に煮物を頬ばり、コバは「うまい」と繰り返した。
「あ、どうぞ。遠慮なく」
店長に薦められ、僕は茄子田楽を恐る恐る口に運ぶ。
「……」
ほのかに甘辛いかおりが広がり、
続いて茄子の素朴な美味しさがやってきた。
この味、僕は知っている。
何の変哲もないけれど、
とてもやさしい味……。
「この人ったらラーメンのスープほったらかして、そういうのばっかり作ってるのよ。
中華の店長の自覚なんか、全くないんだから、笑っちゃうでしょ?」
さっきの無愛想なおばさんが、厨房から顔を出して言った。
「……あ、うちの家内です」
と恥ずかしそうに言う店長。