雪花-YUKIBANA-

皿が勢いよくテーブルに置かれる。

けれどその音よりも、
自分の心臓の音の方が、僕には大きく聞こえた。


この料理……。


先に箸を伸ばしたのはコバだった。

大きな口に煮物を頬ばり、コバは「うまい」と繰り返した。


「あ、どうぞ。遠慮なく」


店長に薦められ、僕は茄子田楽を恐る恐る口に運ぶ。


「……」


ほのかに甘辛いかおりが広がり、

続いて茄子の素朴な美味しさがやってきた。


この味、僕は知っている。


何の変哲もないけれど、

とてもやさしい味……。



「この人ったらラーメンのスープほったらかして、そういうのばっかり作ってるのよ。
中華の店長の自覚なんか、全くないんだから、笑っちゃうでしょ?」


さっきの無愛想なおばさんが、厨房から顔を出して言った。


「……あ、うちの家内です」


と恥ずかしそうに言う店長。

< 231 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop