雪花-YUKIBANA-
切なさに、胸が苦しくなる。
苦しくて、愛しくて、
彼女の名前を呼びそうだった。
僕は再び箸をのばし、料理を食べた。
あの味が、口の中いっぱいに広がった。
コバは何も聞かず、ただ「うまいっすね」とだけ言った。
コバと別れてから、僕はひとりであの公園に行ってみた。
父と、そして桜子のお母さんが出逢った、運命の起点に。
もみじが色づく秋の公園で、彼女の姿を探した。
売店のベンチ、噴水広場、
そして桜の木の下に。
逢えない人を探して、
僕はいつまでも歩き続けた。