雪花-YUKIBANA-
板張りの廊下が素足をじんじんと冷やす、冬の夜中。
山野です、
と電話口で男は名乗った。
「こんな時間に突然お電話してすみません。
……大塚桜子さん、ご存知ですよね?」
受話器を落としそうになった。
僕が返事できないのを予想していたかのように、
男は気にとめる様子もなく、言葉を続ける。
「実は、彼女がスクーターに当てられた現場を、たまたま僕が目撃したんです」
「――え?」
「いや、事故はたいしたことありません。
とっさによけたおかげで、彼女はかすり傷と打撲程度で」
それでですね、と山野は言った。
「知り合いの病院から近かったものですから、とりあえず運んで手当てしました。
……今から来られますか?」
受話器を置く手が、激しく震えていた。
混乱した思考がいくつも、頭の中で行ったり来たりする。
桜子に――やっと桜子に会える。
嬉しいはずなのに、突然のことで僕はうろたえるばかりだ。