雪花-YUKIBANA-
傷を消毒し、打撲した腕に湿布をはり、
ようやく落ち着いたとき。
彼女はやっと、「大丈夫」以外の言葉を口にしたそうだ。
――『あの…私、大塚桜子といいます』
めずらしい名前だから覚えていた、と義広は言った。
彼は、以前僕が話した女の子のことを、しっかり覚えていたのだ。
傷はたいしたことなかったけれど、桜子の顔色は悪かった。
病院という場所に来て安心したのか、
彼女は気を失うように倒れてしまったらしい。
そして深夜に僕の家の電話が鳴り、今に至る。
「けど、どうして家の電話番号が?桜子が教えたとは思えないんだけど……」
ひっそりとした病院の廊下を歩きながら、僕はたずねた。
「ああ、それは――」
と言って義広は、ナースステーションの窓を叩いた。
看護士さんが顔を出して、義広に何かの箱を渡す。
「――これに、住所と電話番号が書いてあったから」