雪花-YUKIBANA-
しばらくすると、ふくれっ面のままの桜子がとなりにやって来て、
洗い終わった食器をタオルで拭き始めた。


水道の音と、お皿を拭くキュッキュッという音だけがキッチンに響く。


桜子の頬は相変わらず膨らんだままだ。


……おもしろい奴だなあ。


僕はなぜかこみあげる可笑しさを、必死でかみ殺す。



小窓から流れてくるのは、秋の匂いの濃くなった心地よい風。


僕の左側で、桜子のロングヘアーが風になびいた。


大きめのニットがそれと同じリズムではためいて、

華奢な彼女の体のラインを、時々くっきり浮かび上がらせた。


「拓人」


とがめるような声で桜子が言う。


「今、目つきがスケベだったよ」

「え、そう?」

「うん。すっごく」


そうかな、と白々しくつぶやいて、僕は水道の蛇口を閉めた。
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