サクラ咲ク
それにしても広い家ね。
綺麗な庭を見ながら奥へと進む。
一番奥まで来て、近藤さんは立ち止まった。
「トシ、俺だ。」
襖の向こうに話し掛けると、衣擦れの音がした。
スッと開いた襖の向こうには、綺麗な男の人。
長い髪を一つに結って、黒い流しを着ている。
「…おかえり、近藤さん。」
「ああ、ただいま。トシ、早速だが新しく隊士にしたい奴がいてな…。悠希、こっちは土方歳三と言って、壬生浪士組の副長をやっている男だ。」
「土方、歳三……?」
どこか聞き覚えのある名前に、思わず呟く。
「ああ?てめぇ初対面で呼び捨てたぁ、いいご身分だな。」
怒ったように言われたその言葉に、ヤバイ!と直感が告げる。
声の主を見ると、土方さんがこれでもかってほどに私を睨んでいた。
青筋立ってます、青筋が。
「言葉のあやです。すみません。」
「はっはっはっ!!トシぃ、新人をそんなに怖がらせるなや。」
「いや、全然怖がってねぇよ、この餓鬼!!!」
土方さんのツッコミが炸裂した。
「まぁとにかく、今日から酒井悠希は隊士とする。いいか?」
近藤さんがそう言ったのを聞いて、慌てて頭を下げる。
「えっと…よろしくお願いいたしま…」
「よくねぇよ。」
遮られた私の言葉は、無力に落ちた。
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