忘れられない人
『今日は携帯が鳴っても途中で止めたりなんかしないからな?』

『はい(笑)』

『それから‥』

そう言ってポケットの中に手を入れて「指輪」を捜した。しばらく捜していると、指輪の箱に手が触れて、嬉しくて笑みが零れた。


本当は昨日渡したかったんだけど‥一日遅れだけど許してくれ。
これが俺の気持ちだ。

陽菜を幸せにする、絶対に。
その決意を一生見守ってくれ。

そう指輪に問いかけた後、真剣な眼差しを送った。

陽菜は首を傾げて待っていた。
俺は陽菜に向かって軽く微笑み、何も言わずに激しいキスをした。キスに集中することに精一杯になるように。

その間に左手にこっそり指輪をはめた。


俺は漸く‥念願の陽菜の指にはめられた。

長かったな。
何度も思うけど、豪華なレストランの席とかじゃなくていいのか?
一生の思い出になるのに、襲ってる途中のプロポーズって‥なんか余裕がない男みたいじゃないか。

って、短い間龍二を見てきたけど、お前はいつも余裕なんてなかったか。
いつも陽菜に振り回されてたな。
それでも、いつも陽菜を信じて待っていた。

お前の決意、確かに聞いたぞ。
絶対に陽菜を幸せにするんだぞ!!

俺は、陽菜の指から龍二を見た。龍二は凄く幸せそうな顔をしていた。


唇を離した後、肩で呼吸をしている陽菜を見ながら頻りに左手を気にした。どうしてこんなに鈍感なんだろう?早く気付けよ!!

そんな俺の想いが伝わったのか、陽菜が聞いていた。

『私の左手そんなに気になる?‥‥ん!?』

陽菜は左手に気付いた。

『バカ!鈍感』

プロポーズの言葉を考えると、耳が真っ赤に染めて行くのが分かった。恥ずかしくて陽菜から目を逸らした。それでも、自分の気持ちを伝えるために耳元で囁いた。


『愛してるよ、陽菜』

陽菜は両手で口元を押さえ、大粒の涙を流して喜んだ。
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