ボスを継いだ少女
私はこの世界が嫌いではない。





でも『青山トシゾウ』の言うとおり、私の周りには『W』の穏健派がいたからそうだと思ってしまった。






それじゃあ、私の本当の気持ちはなんなんだろう…。











私は目を閉じた。









一つの思い出が私の頭の中に浮かんだ。







『C』が初めて活動した日、『伊藤マサ』がサカイに向けて言った言葉だ。










『才能のあるもの、ないもの。能力者、無能者、無能力者。『人としての価値を象徴するのが才能』という世界はいつ終わるのですか』


『何が言いたい…』


『才能が人の価値を決めるんじゃない。人が生きながら価値を磨くんだ。あなたは世界がおかしいと思わないのか』


『思わない。それが世界なのだから』


『そうですか。俺が日々思っていることは、このままではやがて世界に混乱が起きることです』


『それは君が起こしたいからか…』


『違います。俺はそうならないようにしたいだけです』


『そうか…。考えておこう』










私は『伊藤マサ』の背中を見るために『C』にいたのかも知らない。






『伊藤マサ』が今後どうするのかを見てみたかったから…







任務では『神山ミコト』を監視することだったけど、本当は『伊藤マサ』の後を追いたかったのかも知らない。






だから、『神山ミコト』が『C』を脱退したとき、私は残ったのかも知らない。








『『神山ミコト』は『伊藤マサ』しか友達がいないから『伊藤マサ』が説得して『C』に残ると思った』なんて本当は嘘なんだ。








私は心の隅で『伊藤マサ』に期待していたんだ…








私は自分の気持ちに気づいていなかった。








私は…











「私はこの世界が間違いじゃないと思う」
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