教えてよ! マイちゃん先生!!
下駄箱のところにいた背の高い少年に、マイは元気よく声をかけた。

「おはよう!!」


その少年がゆっくりとふりかえる。


マイは一瞬びくりとした。


少年がとても綺麗な男の子だったから。


肌は女の子みたいに綺麗で、目は切れ長で落ち着いた印象を与える。

薄茶色の髪の毛は柔らかい猫みたいだった。

細身で長身だけど、肩や腕は男らしい。


こういう人が現実にいるもんなのだな~と、マイは一瞬のうちに考えていた。


すると不機嫌に思ったのかなんなのか、彼の方もマイをみつめていた。


彼の表情があまりにも睨みつけているように見えたので、マイは慌てて声をかけた。


「私、日比谷マイ。
今日から家庭科の先生になったの。
宜しくね!!
・・えっ~と??」


「・・・3年A組。
桐谷新一」


ボソッと囁くように呟く。


驚く程いい声にたじろぎながらも、

「桐谷(きりや)君。宜しくね!!」

とマイは笑った。


新一はその声には答えず、


「・・転校生かと思った。」

と呟き教室へ消えた。


「・・転校生??」


マイは呆然として、数秒後怒りに燃えた。


「転校生ってなによ!先生だってば~~!!!!!」


クスクス笑い声が充満する。


周りにいた生徒達にバッチリやりとりを見られていたのだ。


「ハイハイ。せーんせっ!お名前は??」


気が強そうな可愛いい女の子が声をかけてきた。


「・・うぅ。日比谷マイ。」

マイは困惑しながらも答えた。


「マイちゃん!今日から宜しくね!!」


女の子はにこっと笑ってマイの背中をぽんっと叩いた。


「マイちゃん!!」

「マイちゃ~ん!!」

周りの生徒達も素直なマイの反応に、好感を持ったのか、みんなでマイちゃんコールを始めた。


「せんせいって呼んでよ~~!!」



真剣に泣き顔で叫ぶマイに、さっきの気の強そうな女の子がまた声をかけてきた。


「あははっ!マイちゃん、素直すぎるよ~!可愛いなぁ!」


可愛いって、私教師なんですけど!!

と更に泣きそうになっているマイに、女の子は自己紹介をした。


「私、一条なつき。3年A組2番、部活は水泳部。マイちゃんせんせいとは気が合いそうで嬉しいよ~」

なつきの「せんせい」という言葉を聞いて、泣きそうだったマイは一気に笑顔になった。
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