1985

出会い

中学を卒業した俺は1985年に建てられた地元の工業高校、「神野工業」に入学した。

もちろん生まれ年と同じだから選んだ。

「今日から高校生かぁ」と思いながらサラリーマンと学生だけのバスに乗った。

入学式に行くと太めのズボンをオシャレと思ってはいてる奴や、明らかに化粧が濃いい奴らに「なにが楽しいん?」と思いながら寝癖頭の俺は退屈な入学式を聞いていた。

俺が選んだ機械科は40人中39人が男だった。

「暑くるしぃ」と思ったのは俺だけでは無かったと思う。

入学式が終わってから学年主任の横分けのオッサンが

「頭髪検査を行うから今から言う奴は体育館に残れ!」

と偉そうに叫んでた。

いきなり命令口調かよと思いながら元から髪が茶色い俺は案の定残れと言われた。

中学から黒くしろと言われ続けた俺は理由を説明するのもめんどくさかった。

俺はしらけた目で目の前のオッサンの話を聞きながしていた。

俺の横で、ヘラヘラしながら

「いやぁ昨日兄貴に入学式やったら気合い入れて行かんかい!言われまして無理矢理染められたんですわぁ。」

とツイストのパーマ頭に少し背の高いアホそうなやつが大声を張り上げていた。

「明日までに黒くして来い」

とオッサンが言った

「待ってや先生!髪の毛黒くしても中身は俺のまんまやで!世界史に出てくる人間の生き方は参考にすんのに見た目は何で真似したらアカンのですか?」

かなりの屁理屈に俺は共感できた。俺の変わりに言ってくれてる気がした。

「先生俺は後悔したくないねん!髪があるうちじゃないとできひん事やんか!」

よくペラペラ喋るなぁと思いながら解散を向かえた。

早く帰って寝よと思った時にポンっと肩を叩かれた。

さっきのパーマ男だった。

「俺の名前は茶橋 船幸!チャップって呼んでや!ヨロシク、さっきは大変やったなぁ。同じクラスやし仲良く行こうや!」

それがキラキラ光る馬鹿、チャップとの出会いだった。
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