あたしと彼と白いキャンバス
さっきまで冷静だったあたしの脳味噌はみるみるうちに混乱をはじめる。


「――あたし、帰ります」

「嫌だ」

「え?」

「慰めて」


耳を疑った。

涙に濡れた先輩の顔が、あたしの顔に近付いてくる。

唇に、息が触れる。


心臓がざわめく。



頭がおかしくなりそう、だ。





ガツッと音が鳴り、先輩が顔を歪める。


あたしは先輩を拳でぶん殴っていた。
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