あたしと彼と白いキャンバス
志乃の声はもう聞こえない。

姿は見えないけれど、俯いている志乃の姿を想像するのは容易だった。


馬鹿な女たちの声は続く。


「大体、なんで前から小早川のこと気にしてるわけ?」

「そうそう。あいつに話しかけてたの志乃だけじゃん」

「酷い、とか言っときながら全然イジメに参加しないしさー」

「みんなはイジメとかしてるけど、あたしだけはいい子なの、みたいな?」


棘のある声が耳障りだ。

むかつく…。




「いい子ぶんのもいい加減にしろよ」




志乃に向けられたその台詞が、頭の中の『冷たさ』をぶち壊して。


あたしは新太郎先輩の手を振り払い、階段を駆け下りた。
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