あたしと彼と白いキャンバス
淡くて儚い風景画。

そうか、あれは先輩の『感情』だったのか。


「あたし、あの絵好きです」

「……」

「普段の先輩の絵はロボットが描いてるみたいで嫌いだけど」

「はっきり言うね」

「あの水彩画はちゃんと人間が描いてるから好きです」



先輩はなにかを言おうとして、それなのに口を噤む。

そして探るような視線をこちらに向けた。


「…あの絵が好き?」

「はい」


先輩は箸を置き、床に放り出したままのスケッチブックを引き寄せた。

ぱらぱらとページを捲ると、挟み込まれた画用紙が現れる。


先輩の部屋で見た、あの絵だ。
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