あたしと彼と白いキャンバス
「また絵を描きたくなってきた」


光を宿した黒い瞳があたしを見る。



「モデル、やってくれるかな?」



高鳴った鼓動は正直で、あたしは自分の胸元をぎゅっと掴む。




「あたしにも、先輩を描かせてくれるなら」


先輩は少し驚き、再び「恥ずかしいな」と言って笑った。



甘い。甘い。甘い。


時間はこんなに甘いのに、どうしてこんなに苦しいのか。


それは彼の瞳にあたしが映っていないからだ。

こんなに感情が見れるのに、
その感情はあたしへのものじゃない。
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