あたしと彼と白いキャンバス
あたしは焦っている。

もっとたくさん彼を描きたくて。

スケッチブックに彼を記録したくて。

今も時間は刻々と流れて、
あたしに残された猶予は確実に減り続けているのだ。


――引っ越し先が決まったから。




バンッと大きな音を立て。

篠宮先輩が美術室の扉を開けた時、時計の針は5時半を指していた。


「あ、篠宮先輩」

「やっと千里先輩きたー」

「おせーよバカチン!」


記憶を頼りにお題の絵を描くという(テレビで見たことのある)遊びをしていたあたしたちは、

一斉に顔を上げて先輩を見る。
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