~LOVE GAME~


春岡君?
聞き覚えのある名前に首をひねると、すぐにああ! と思い出した。
昼間、ちながかっこいいとか話していた人だ。
へぇ、同じ委員長なんだ。
どれどれ、と中をよくみると、コの字型になっている机に頬杖をついた男の子がいた。

各クラスの委員長の席はほとんど埋まっているが、みんなの視線がそこに集まっており、すぐに彼が春岡君だとわかる。
そもそも、一番目を引く存在だからいやでも目についた。
ということは、中に入っていないこの人たちは野次馬か……。
委員会には関係ないけど、中が見たいからみんな入口からみていたのね。
ふむふむと状況に納得して、改めて春岡君を見る。

入口にいる私の位置からだと、彼は廊下側の席に座っているので横顔しか見えないが、なるほど確かに美形だ。
鼻筋も通っており、まつ毛も長く目元も切れ長の二重。少し長めの前髪がなんとも色っぽく見える。
整った顔立ちの正統派イケメンというやつだろう。
へー、と見ていると隣の貴島君がボソッと低い声を出した。

「やっぱり春岡も委員長なんだ」
「貴島君、知ってるの?」
「あ……いや。春岡は入学試験で学年トップだから、嫌でも委員に任命されるだろうなって思って」
「へぇ~」

凄い、学年トップで美形でって完璧なの!?
神は二物を与えたんだなぁ……。
世の中には凄い人もいるもんだな、とのんきに感心していると先生が入ってきたため、慌てて席につく。
入口も閉められ、全員がそろったところで担当の先生が口を開いた。

「じゃぁ、まず、各クラスの委員長の自己紹介をしてもらおうか」

A組の男子委員長、女子委員長と自己紹介が始まる。
あぁ、自己紹介とか嫌だなぁ……。 緊張しいなのに……。
と、ひとりドキドキしていると、小さい歓声が上がった。
な、なにごと!?
驚いて顔を上げると、女子が騒いでいたイケメンが立って自己紹介をしていた。

「1-B、春岡 龍輝(はるおか たつき)です。よろしくお願いします」

低良い声でそう挨拶して、ふっと小さく微笑むと歓声はより大きくなった。
うわぁっ、本当に噂通りカッコイイ!
何、今の笑顔! どこかのアイドルのようだ。
私もつられてドキッとしてしまった。
騒ぎたくなる女の子たちの気持ちがちょっとわかる。
えへへ、良いものみれた気分。
明日ちなに自慢しちゃおう。
得した気分でいると、あっという間に自分の自己紹介まであと少しになっていた。
うわっ、別の意味でドキドキしてきた。
大丈夫大丈夫。
名前を言えば良いだけ。やれるぞ、私!
そう、緊張を抑えるように心の中で呟いて気持ちを落ち着かせていると、不意に視線を感じて顔を上げた。
ん? なんだろう?
辺りを見回してみる。するとじっとこちらを見ている春岡君と目が合った。
視線が合い、思わずドキッとする。
えっと……? 私、春岡君に見られてる?
でも目が合っても、表情変えずにじっと真顔で見られてるってちょっと怖いんですけど……。
今度はその視線に妙にびくびくしてしまう。



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