~LOVE GAME~



お兄ちゃんの言うあいつって……。

『お前の本当の相手』

その言葉が心に響いた。
そうだ、私の本当の気持ちの相手。
家まで来てくれたんだ。何しに? 今日は、貴島君とデートだって知っているはずだよね?
それなのに、息を切らせて私の家まで何しに来たの?

気がつくと私は走り出していた。
なぜか、あそこへ行きたいと思ったんだ。
ふたりの思い出のあの公園へと。


どうしてここに行きたいのかなんて、わからない。
でも、行かなきゃって。
会うならそこしかないって思ったの。
それがどうしてかなんてわからないけど、でも、彼ならここにいるって思った。
きっとここに居るって思ったんだよ。

「龍輝君……」

私の呟きに、あの道路沿いの大きな木の上に居た人がユックリと顔を上げた。
そして、下にいる私と目が合う。
やっぱり、いた。

「龍輝君」
「……」

呼びかけても無反応だ。

「あの、えっと……」

何て言ったらいいだろう。私が言葉に迷っていると龍輝君はクスッと笑った。

「どうしたの。今日は貴島とデートじゃなかったの」
「あっ、うん……。そうなんだけど……」
「帰り早くない? 泊まりかと思ったけど?」
「なっ…! 違うっ!」

慌てて大きな声で否定する。
龍輝君はそんな私をチラリと横目で見た。
そして龍輝君は薄く笑いながら私に言った。

「おいでよ、楓ちゃん」

ハッと龍輝君を見る。

「おいでよ」
「たっくん……」

私に向かってスッと伸びた、その差し出された手を……掴んだ。
こどもの頃は、私のほうが少し背が大きかった。

『おいでよ、たっくん』

そういって今みたいに手を差し出していた。
あの可愛いたっくんが、今こうやって私の手を取り、軽々と持ち上げる。
その力強い腕に胸が高鳴る。
私を顔色ひとつ変えずに木の上に持ち上げちゃうんだ。

もうあの頃の、可愛いたっくんではない。

“男の人”なんだ。










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