また、明日~天使の翼を持つキミへ~



「田沢!!」


放課後。

いつもより早く教室を出ようと帰宅準備をしていたら、男子3人組があたしの教室に走り込んできた。


一度持った鞄を、ゆっくり机に下ろす。



「親太郎、風邪で休んだんだって?」


茶髪でツンツン髪の拓海くんが、眉間にシワを寄せた。


「うん。何か、熱が出て苦しそうだった」


「マジかよ〜!! 昨日徹夜して曲仕上げたから、放課後音合わせしようと思ったのにぃ!!」


キィィッと、頭を抱えたのは、みんなのペット的存在の叶くんだ。


茶髪の少し長めの髪は、いじけた子犬のように、しんなりしている。


「まぁ、風邪なら仕方ないべ? いつでも練習できんじゃん。叶、昨日寝てねぇし、少しは休めって天からのお告げなんじゃね?」


耳もしっぽもだらんと垂れた叶くんの頭をポンポンと撫でたのは、みんなの兄貴的存在の高橋くん。


彼は、黒髪に眼鏡をかけていて、この中で一番頭もいい。


彼らは、親太郎のバンド仲間。


音楽が大好きな親太郎が、みんなに声をかけてつくったバンド。


バカな親太郎がリーダーだから、しっかり者の高橋くんは、みんなのまとめ役にピッタリだった。


「田沢、これ、親太郎に持ってって」


高橋くんから渡された一枚の紙。


さっき叶くんが言っていた、新曲の楽譜だった。


「わかった。これ見たら、熱も下がるかもね」


教室に差し込む西日。


みんなの笑顔が、真っ赤に輝いた。


この、新曲の楽譜も真っ赤だ。


それはまるで。

リーダーとの初対面を、恥ずかしがっているように見えた。




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