可能性の種
初めて私が初老の男性に出会ったのは、通信制高校の入学式。
余り通信制高校というモノを理解していなかった私は…同年代の人々ばかりだと思っていた。
一際目立つ白髪姿にスーツ。
私は一瞬目を疑った。
幅広い年代の人々がそこに居たのだった。

入学式が終わり、月2のスクーリングの始まり。
初老の男性は1番前の席を陣取り、熱心に授業を受けていた。
私たちのようにほぼ現役の年代の生徒より、よっぽど熱心に授業を受けていた。

徐々に打ち解け始めた頃に、前回書いた話を聞いたのだ。
戦争があり家も貧しく、生活のための「集団就職」。
その当時の初老の男性の本音はどうだったのか?
未だに私は分からないけど…そういう選択しか無かったのかも知れない。
初老の男性はいつも真面目にレポートも提出し、スクーリングも受けていた。

この初老の男性の決断の裏には、家族の協力も大きかったと思う。
よく娘さんの話をされていたのを思い出す。
確か在学中に娘さんが結婚をしたような記憶がある。
時代とは言え、相手の家族に対してもこれから生まれるであろう孫にも、「高校卒業」という事実が必要だったんじゃないのかな?
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