Simply

---好きな女を俺好みにするっていいな

かずまのセリフを思い出す


---俺のモノってしるしつける

前田さんとパーティに行く前に見せた子供のような独占欲


甘いセリフに酔わされて、着飾らされて浮かれて……



そういえば前に、あことそんな話をした

なんで……アタシなんだろう???

モテるのに、他に女の子なんていっぱいいるのに

店で話したこともないし、初めてかずまを車に乗せた日なんて名前を聞いても“知る必要ある?”なんて突っぱねられたのに


角を曲がると「おっ!」と声があがって、誰かの姿が目の前に迫った



「…………ッ」


驚いて立ち止まろうとも、加速されてたスピードは簡単には落ちずにぶつかってしまう


「あれ?なんで片方靴はいてないの?」


制服のブレザーのボタンは全開で、シャツも半ばはみだした格好の男子生徒


目線を上げると、長瀬くんがキョトンとした目でこっちを見下ろしていた

かずまほどではないけれど背が高くてガタイのいい姿

アタシが片方靴を履いていないことも手伝って、いつもより大きく感じる

「……あれ??泣いてる?」


ちょっと涙目になっていたのがおさまらないのを長瀬くんに指摘されて、勢いよく顔を俯けてごまかした

彼がかがんでアタシの顔をわざわざのぞき見ようとするから、今度はあごを引いて距離を取りつつ視線だけ少し上げた


じーーーっとアタシの顔を見たまま止まる


「あ、あの……何?」


いたたまれずにアタシから聞いてしまった


「かずまが入れあげてる女の顔を観察してる」

…………更にじろじろと見られて目のやり場に困ってしまう

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