Voice〜彼の声〜



榊と別れ家に入る。



リビングにはお母さんとお父さんがいた。


「ただいま」


「おかえり〜」


お母さんはキッチンから顔を覗かせ、お父さんはテレビから私に視線を移す。



「…ごめん、晩御飯いらない」


「しんどいの?」


「ううん…大丈夫だよ」


それだけ伝えると自分の部屋へと戻って、電気も点けずにベッドに横になった。


お腹は空いてるんだけど、胸がいっぱいで食欲が沸かない。


さっきの榊との出来事が頭に蘇る。



私、榊とキスしたんだ…。


そう思うと段々と恥ずかしくなってくる。



明日、どんな顔して会えばいいのか分からなくなってきた。


悩みもいつしか薄れ、気付けば眠りの世界に入っていた。



その日の夜、久しぶりに創ちゃんの夢を見なかった。



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