ちっちゃな体のおっきな愛

ラスト・ゲーム直前

 「じゃあ、今日はここまで!!」 

6時限目の、体育の授業が終わる。

 「愛莉~!そういえば、朝の事なんだけど…。」 

 「もう、知ってるよ。」 

 「え~、何で??」 

 「あんたら、見てたら分かったよ。」 

何だ~、あたしって、分かりやすいのかなぁ??

 「あたし、最近連と何かあるんだよねぇ…。」 

 「…まぁ、とにかく頑張んなよ…。ほら、もう部活始まるでしょ?」 

 「そうだね!!じゃあ、そっちも頑張ってね!!」 

 「うん、じゃあね~!」 


まだ、みんなは来てないみたい。

練習、練習…。

あれ、ボールがない…。

と、そこに体育の先生が来た。

違うクラスの体育で、ボールを使ったみたい。

「あ、加藤さん!!ちょうど良かった!!…これ、片付けといてくれる?」 

思わぬ雑用を頼まれたあたし。

 「はい…。」 

 「じゃ、よろしくね!!」 

…とは言ったものの。

 (数、多すぎでしょ…。)

 「よい、しょ…。」

背が小さいあたしがそのかごを持つと、前が全く見えなかった。

しかも重くて、フラフラする。

 「ひな?」 

ビクッ!!

誰かに突然、声をかけられた。

その瞬間、ボールが一つ、…テンッと、落ちた。

 「あ…!!」

あたしはいったんかごを棚に置いた。

そして、ボールを拾った。

だから、あたしは気付かなかった。

かごが、今にも落ちそうなことを…。

ガタンッ!!

音がして、うえを向いたときには、もう遅かった。

ガラガラ…。

ボール達が、音を立てて崩れ落ちた。

 「きゃっ…。」 

目をつぶった後、何かに引っ張られる感覚が残った。

 「…?」

目を開けると、上には天井。

横には、ひどく散乱したボール。

そして、下には…。

 「…って。」 

そう、あたしの下敷きになった…連。

 「ご、めん…。大丈…夫?」
< 5 / 13 >

この作品をシェア

pagetop