そして悪魔は二度微笑む【コラボ】
「ルカ、一週間でどれくらいの人材を集める事が出来る?」

『……20……、と言った所だな』

「わかった。それでいい」

ベリルは、携帯を閉じると天井を見上げ目を閉じた。勝てるのか? そういう自問が脳裏に浮かび上がる。いや……、勝たねばなるまい。そういう自答と共に。

その耳に扉の開く音が聞こえた。誰かはわかっている。元より、ここには彼と彼女しかいないのだから。

「父を……、頼みます」

「立ち聞きしていたのかね?」

「すいません。寝れなくて」

ニナがベリルの隣に腰を下ろす。

「明日から偵察にでる」

「私も連れて行って下さい」

ベリルの肩にニナの頭が乗せられた。彼は目を閉じたまま、その頭を優しく撫でてやる。そして、一頻り撫でた後にゆっくりとした口調で口を開いた。

「駄目だ危険過ぎる。心配しなくていい。明日の昼過ぎにはダグラスと言う男が来る。ニナの護衛は彼にしてもらう予定だ。信頼できる男だから安心していい」

「父は……、父はまだ生きているでしょうか?」

ニナの声が震える。その震えを止める様に、ベリルはニナの肩を強く抱いた。

「さあな……。生きているかもしれんし、死んでいるかもしれん」

彼は、真実しか話さない。期待を持たせた所で苦しむのは彼女なのだ。

「慰めては……、くれないんですね……」

「それを君は求めている訳ではないのだろう?」

「くっ……、あぁぁ……。それ……でも……」

言葉を続けるニナに、ベリルは厳しく、それでいて優しい言葉を投げかける。

「悪いが、私は仮初めの嘘を堂々とつける程に器用ではない。だが、君の父を助ける為に全力を尽くす事は誓おう」

ニナの鳴き声が部屋の中を埋め尽くす。泣きたい時には泣いた方がいい。彼は慰めの言葉を掛ける代わりに、肩を抱く手に静かに力を込めた。



やがて泣きつかれたニナは、ベリルに抱かれたまま寝てしまった。彼は、彼女を抱きかかえてベッドに横たえると、そっと頬にキスをする。

「おやすみ、ニナ」

一滴の涙が彼女の頬を伝い、枕へと滴り落ちる。

それを指先で掬った彼は、扉を閉じて彼女を束の間の静寂へと導いた。
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