そして悪魔は二度微笑む【コラボ】
ベリルが山間に位置する研究所の偵察を始めてから3日。

彼は周辺のマッピングをしながら、敵戦力の確認を行っていた。

「迎え撃つ気か」

戦力の増強が図られているのが解る。ルカからの情報だと相手側についた傭兵の数は、確認出来ただけで35名、潤沢な武装も相まってまともにぶつかれば勝ち目はない。

救いがあるとすれば、練度の差。事情も話さず高額の報酬だけを用意する死の商人。

そのような相手の呼び掛けに、一線で戦う傭兵が簡単に集まる筈がない。

素人に毛が生えた程度の輩ばかりであることは、ライフルの望遠スコープ越しでも解る。

問題はその武装だ。こちらはグランの庭で、奴の息が掛かっていない武器商人から武器を調達している。その差は歴然としていた。

特に問題なのは、研究所の脇に置かれてある軍用ヘリだ。

全天候型攻撃ヘリAHー64D、通称アパッチ・ロングボウ。最大256の標的を探査認識可能なミリ波レーダーに加え、ご丁寧にヘルファイア2対戦車ミサイルまで搭載されているのが見える。

研究所の近くでは、安易に使用する事はないだろうが30mmチェーンガンだけでも、全滅してお釣りがくるだろう。

この防衛網を突破して室内戦に移行出来さえすれば、勝機が見えるのだが……。

ベリルの脳裏に、その勝機へと繋がる男が浮かんでくる。
彼はその考えを振り払うかのように頭を振ると、改めてライフルを構えた。

構え直した事で、先程より上方へブレる照準。そのスコープに白衣を着た女が入った。

丁度研究所を挟んで対面の位置。彼女は手に持ったPCのキーボードを叩きながら、研究所を見下ろしている。

何者だ? 研究所の科学者か? それにしては様子がおかしい。彼女は、時折りキーボードを叩く手を休めると、ポケットから取り出した双眼鏡で研究所を見ている。余りに無防備な動きだが、あれでは偵察ではないか。

その時、ベリルの携帯が振動した。

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