そして悪魔は二度微笑む【コラボ】
『ベリル、俺達以外にもグランと事を構えようとする馬鹿がいるみたいだぜ』

「ルカか、どういう事だ?」

『一昨日から、奴らの他の施設にクラッキングを仕掛けている奴がいる。おかげでその研究所も、ネットワークからの遮断を余儀なくされている』

「一体だれが」

そう呟くベリルの脳裏に、あの化学式が浮かぶ。どこかの諜報機関が動きだしたか?

『それがね。アサミとか名乗っているみたいなんだが、どこの奴らかわからないんだ』

アサミ? 日本人の名前ではあるが……。

スコープの倍率を拡大した。見えるのはアジア系の面立ち。

まさか……な。

スコープの中の女が耳に何かを入れて、こちらを向く。距離は700メートルを越えていて、こちらは伏せた状態だ。見える筈がない。ましてや光の反射も考慮にいれて、背中に太陽を背負っている。

『まあ、引き続き……』

ザザッ……。雑音が入る。

『そんなに見つめられると恥ずかしいな。ベリル・レジデント』

女の唇が動いている。読唇術で読み取った言葉と、耳から聞こえてくる言葉が一致した。

即座にベリルは、ボルトアクションライフルのレバーを引き、カートリッジを装填、照準を女の肩に合わせる。

「レディ、御名前を聞かせてくれんかね?」

『今、ルカと言う情報屋から聞いたのだろう? アサミ・レンジョウ、見ての通り科学者だ』

白衣を来た姿は、科学者と言うよりどこかの美人女医とでも言った方が良さそうだ。

「その科学者が何の目的でここにいるのだ」


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