空へ。‐夢の先‐
「おめぇなぁ、何も言わずに待たせた上にどこ連れてく気だよコラァ!!!」



動き出したのは
今までソファに暇そうに座っていた

まさに“硬派”というような
黒髪の不良だった。



龍「俺の撮影現場だ。お前も来い」


柔らかい表情を変えずに不良に言う沢木さん。


「ふざけんじゃねぇぞ、」


不良はガッと沢木さんの胸ぐらを掴んだ。




緊迫した
空気が流れる。


何も言わずに不良を見下ろす沢木さん。


今にも殴りそうな鋭い目つきで沢木さんを睨みつける不良。


あたしは反射的に不良の腕を掴んだ。



「…何だコラ」

紗姫「殴っちゃだめっしょ」

「…どけよ」

紗姫「お前がどけよ、沢木さんに乱暴すんな」



胸の奥からジワジワと何かが込み上げてくる。

徐々に懐かしいあたしが心の中に蘇ってくるのが分かる。


「…このクソアマ」










そう、あなたとあたしの出逢いは



運命と呼ぶにはあまりに乱暴で荒々しくて



偶然と呼ぶにはあまりに衝撃の出逢いだった。



もしもあなたとあたしが出逢うことを知っていたなら



もしもあなたとあたしが恋に落ちることを知っていたなら




あたしはきっと、あの時掴んだあなたの手を




絶対に放しはしなかったのに。
< 19 / 125 >

この作品をシェア

pagetop