コーヒー溺路線
 

有木ミカコは藤山松太郎に一目惚れをした。
物腰の柔らかい松太郎に情を覚えてからというもの、父親に頼み込んで藤山商事と提携をするよう頼んだのだ。
 

ミカコが松太郎に一目惚れをしたのは数年前の船上パーティーの時だった。松太郎はアメリカから一時帰国をし、いつもの秀樹の気紛れにより参加していた。
 

あの時には話しかけることもできなかったが、今は見合い、それから婚約、結婚まで話を進めることができている。
しかし松太郎が気乗りしていないということはミカコにも察することができた。
 


 
「父様、松太郎さんとお話がしたいです」
 


 
ミカコがそう言うと快く社長同士二人は個室から出て行った。
松太郎は気まずい表情でソファに腰掛けている。ミカコは松太郎の真向かいのソファに座っていたのを、素早く立ち上がり松太郎の隣りに腰掛け直した。
 


 
「松太郎さんは、このお見合いに気乗りなさらないようですね」
 

 
「……」
 

 
「私は松太郎さんとの食事会を楽しみにしていました」
 


 
松太郎は酷く困っていた。
断る訳にはいかない、自分に好意を寄せていてくれる女性を傷付けることもしたくないのだ。
だけど松太郎が望むのはミカコとの結婚ではなく、彩子とのこれからなのだ。
 


 
「話して下さらなくても結構ですから、少しは食べて明日への活力にして下さい」
 


 
松太郎は、このミカコをイイ女なのだと確信した。しかし結婚はできない。したくない。
 


 
「松太郎さん、私からは決して破談にしません。よく考えて行動なさって下さい。これからの社のことではなく、自分の将来の為に」
 


 
< 129 / 220 >

この作品をシェア

pagetop