コーヒー溺路線
 

彩子は結局俊平にマンションの前まで送られた。俊平は、女性一人で夜道を歩くのは危険なので気をつけて下さいねと念を押して帰っていった。
 

郵便ポストの中を確認してからエレベーターで四階まで上がる。
鍵を開けて部屋に入ると直ぐにシャワーを浴びた。
シャワールームから出ると彩子は部屋着に着替えてキッチンへ向かう。
 

それからいつものようにコーヒーをいれる為に湯を沸かすのだ。
マグカップも既に出してある。
コーヒーをいれ終えると、彩子はそのコーヒーの入ったマグカップを持ってテレビの真向かいにあるソファに座った。
 

松太郎が社長の息子でなかったならば、どれ程幸せだっただろう。彩子はその理想に夢ばかりを見た。
 

もうきっと、彩子が松太郎のことを名前で呼ぶことはない。それはけじめだ。
意地でもある。次にもし松太郎と彩子とが二人きりになることがあれば、それはもう泣かずにはいられないからだ。
 


 
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