コーヒー溺路線
松太郎はミカコらとの淡泊な食事会を重ねていた。
彩子がこのことを知っているかは松太郎には解らない。彩子のことだからきっと知ったからとは言え、何も言わないのだろうなと松太郎は思う。
「私と結婚をするのは嫌ですか」
黙々と食事が進む中、ミカコがぽつりと呟いた。反応した松太郎はゆっくりと顔を上げる。それから口元へ運びかけたフォークを戻した。
「そういう訳ではないですが」
「それじゃあ松太郎さんには他に大切な方がいるのですね」
「……」
松太郎がそれにはっきりと返事をすることはできなかった。
もうミカコは知っているのだ。
しかし、以前言ったようにミカコから破談にすることはなかった。
少し離れた場所で秀樹と有木社長が楽しげに盛り上がっていた。
「形式上の見合いは今週末に行なうようですよ。それまでは普通の顔をしておいて下さいな」
「今週末ですか」
松太郎はぼんやりと考えていた。
もうこのまま結婚をしてしまったらきっと彩子に会う必要も可能性もないのだ。
しかし、この結婚は果たして自分にとって幸せなものだろうか。それは、考えるに至らない、ぼんやりと思う程度のことだった。