コーヒー溺路線
マスターは彩子に何かを言いたいようだった。渋い顔でじっとカウンターの壁を睨んでいた。
彩子は至って涼しい顔で出されたコーヒーを口にしていた。
今日も変わらずここのコーヒーは美味しい、彩子の口元が少しだけ緩んだ。
「……」
この沈黙は決して心地良いものではなかった。彩子に何かを聞きたいらしいマスターもずっと黙ったままで、彩子も黙っているしか他ならなかった。
いつもの心地良い沈黙ではなかったのだ。
それでも彩子は変わらずこのコーヒーショップへコーヒーを買いに来ていたし、彩子が来る度にマスターはマグカップへコーヒーを注いだ。