妖怪外伝百鬼夜行
「父さん……?」

ようやく管狐の案内の元、秀明の元へと到着した。妖怪の住処であるこの島。それであるにもかかわらず、ここに来るまで一度も襲われたことはなかった。

その理由が、到着した時に分かった。


「何やってるの!」

見たとき、すべてが分かったとき、激しく陽は取り乱した。
だがそれ以上に、予期せぬ陽の登場に秀明は驚愕し、言葉を失っていた。

「父さん! ねぇ! 何やってるの!?」

娘の言葉が胸に突き刺さる。明らかに自分を恐れている声だった。
実際に、陽は秀明を恐れた。目の前に広がる光景が、秀明が自分と同じ人間であると、自分の父親だと、そういうことに疑いを持たせる。

こんなに恐ろしい人が人間?


自分の父親は、こんなに恐ろしいのか?


わけが分からなくなった。
陽は泣きながら、その場から逃げだした。

秀明はただそこに立ちつくす。
その手には、鬼の首がぶら下がっていた。


その姿は、鬼の血によって染められていた。
その瞳は、憎悪にぎらついていた。


その場周辺に生きた鬼の残骸が散らばっている。
それぞれが命をつきさせることが許されず、絶えず続く痛みに苦しんでいた。

足も、手も、臓物も、声にならない悲鳴を上げている。
心臓を潰さない限り彼らは痛みとともに生き続ける。


秀明は鬼をなぶっていた。生かさず、殺さず。苦しみを長く長く続かせ、それに飽きれば心臓を潰して殺した。それを毎夜、秀明は繰り返していた。


朝帰りの理由は、
残虐な手によって行われる


『鬼の殺戮』だった。

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