妖怪外伝百鬼夜行
「……」

「…………」


その翌日、陽は学校を終え、店へと入った。

前夜に見た秀明の姿は今でも焼き付いている。あの時の鬼の姿が消えない。
あれから、家へと帰り、秀明を避けるように足早に学校へ行った。

店に来たのは、冬矢に呼び出されたからだ。
洋子から話を聞き、きっちり話をしておくべきだと、メールに書かれていた。


知るのは怖い。
だが、知らなければならない気がしている。

どうして秀明はあんなことをしていたのか。陽は知る必要がある。



中に入れば、すでに秀明は待っていた。
その雰囲気はいつもとどこか違う。真剣な、重い表情をしていた。


「……昨日は、驚かせて済まなかった」

秀明は陽が席についてそうそうに頭を下げた。まだ脳裏に焼き付いているとはいえ、一晩明けたことによってだいぶ陽も落ち着いていた。

「なんで、あんなことしてたの? 父さんは陰陽師だけど、妖怪を滅するのに、あそこまでは、しないよね?」

恐る恐る、だが聞きたいという目で陽は秀明を見つめる。秀明は、言葉を詰まらせた。
だが、観念したのか、ふぅっと息を吐きだした。

「陽、母さんのこと、覚えているか?」

「あんまり。だって、事故で死んだのは、私が一歳の時だから……」

「違うんだ……」

「へ?」

秀明の目は悲しみに沈んでいた。そんな憂いを帯びた瞳が、陽に向けられる。
そして衝撃の言葉を吐いた。



「母さんは、鬼に殺された」

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