妖怪外伝百鬼夜行
「何それ……。
  ……何それ!!」

ガタリと音を立てて陽は立ち上がった。きつく秀明を睨みつける目には涙が滲んでいる。
突然怒りをあらわにする陽に、秀明は何も言わなかった。

「うそついてたの!? ずっと、隠してたの!? なにそれ! 私は……! 私は!!」

「陽……」

「触らないで!! もういい。ここまで最低だとは思わなかった!」

怒りをぶちまけ、爆発する陽をなだめようと冬矢は手をかけるが、それは強く払いのけられた。なおも陽は秀明を睨みつけ、店を飛び出した。


「秀明さん、陽を追わなくて、良いんですか!」

その陽を誰も止めなかった。秀明はただおとなしくそこに座っていた。飛び出た陽を追わずただ一人で、何もせずに座っていた。そのことを洋子が行っても、秀明は首を振る。

「俺は追えない……資格がない」

「兄貴! 陽は……!」

冬矢もまた口をはさむが、言葉の途中に秀明は一枚の札を出した。

「……陽の携帯に式神を仕込んである。案内をつけるから、冬矢、お前が追え」

そして式神が現れる。小さな男の子がそこに立っていた。

「兄貴……」

「陽に知られたくはなかったからな。携帯をあいつがあの時持ってたら、ばれずに済んだのにな」

そう言う事を言いたいんじゃない。
そんな言葉が口から出そうになる。だがそれよりも飛び出した陽のことが心配だった。
冬矢は洋子に目配せし、幼児を連れて店を出た。

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