妖怪外伝百鬼夜行
「…………」
「まあ、小夜子以外の人間消して回るのが確実だけど、面倒だからな」
そう言う問題じゃない。彼の思考そのものがぶっ飛んでいた。本当に彼があのゆず先生なのかと、疑うほどに、彼は狂っていた。
「……分かってる。ちゃーんと罪は償ってやるから」
三人の視線を受けて、穂村はまた笑った。
ゆっくりと彼は屋上のへりへと進む。
「せんせ……」
「来るなッ!」
止めようと走り寄ろうとしても、穂村の叫び声が突き刺す。
彼の言葉はすべてが本気だった。
独占欲を語る時も、狂っているときもすべて本気。すべて真剣だった。
目の前の、穂村由月は真剣に狂っている。
そして、本気で落ちるつもりだった。
止めようとしても彼の睨みが足をすくませて進ませない。
「まあ、潮時なんだろうな」
ゆっくりとへりに立つ。そして、背中を向け始める時、
「待って! 由月ッ!」
姉妹が飛び込んできた。