妖怪外伝百鬼夜行

「待っ……!」

痛みにうめきながら烏丸は後を追った。東も陽もそれに続く。
残った千夜は目の前の小夜子を見つめていた。


「お姉ちゃん……」

「千夜、大きくなったね……」

そこにいたのは、普通の女性と変わりない、およそ監禁されたとは思えないほど綺麗な格好をした小夜子だった。
千夜と似通うその容姿。だがどこか美しくも感じられ、柔らかな空気を醸していた。

「お姉ちゃんっ」

千夜が小夜子に抱きつく。泣きじゃくる千夜の頭を優しく小夜子は撫でた。
やっと、出会うことのできた姉妹の再会。
小夜子の眼にも涙がにじでいた。






そんな姉妹の再会の一方で、
逃げた穂村を追った先に到着したのが、屋上だった。
なぜ彼がこのような行動を起こしたのだろう。

「先生、聞いていいですか。どうして、こんなバカなことを」

そんな中で、東がそれを聞いた。
穂村は笑ったままだった。笑ったまま、彼は平然と言った。

「小夜子を独占したい。それだけだ」

言いきった。自分の独占欲によって起こしたことだと。

「小夜子は俺だけの物。他の奴の目にさらさない。他の奴の手に触れさせない。俺だけの存在。だから、誰の目にも耳にも触れないように、ここに住まわせた。俺一人じゃ不可能だからな、校長も協力させた。あいつ、俺には逆らえないから」

「どういうことですか…」

「俺は方法を選ばないだけだ。校長自らの命と家族の命を握った。ただそれだけ」

次々と彼の口から恐ろしい言葉が飛び出す。一体彼は何をしてきたのだろう。どのように育ってきたのだろう。こんなにも狂った人間は見たことがない。

「なんて人……」

信じられなかった。
学校で見てきた彼とは別人の穂村がそこにはいる。独占欲にかられて、小夜子を閉じ込めて、そのために手段を選ばず、人を脅迫し、さらには……

「行方不明の生徒たちは…」

「最後の七不思議だ。小夜子を見られたからな。……消した」

七不思議の最後のひとつは、何よりも恐ろしい物だった。聞いた瞬間に、背筋が凍る。
本物の人殺しがそこにいた。
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