二 億 円


「優、余計なことを話すな。」


振り向くと、明らかに怒りを表す刹那さんの姿。


「刹那…。ごめん。でもね、彌生くんなら…もしかして「ありがとう優。でも、それは誰にも言わない約束だ。」」



彼女は悲しそうに、刹那さんに付いて去っていく。



「…黒田彌生。颯人の話は忘れろ。お前には関係無い。」



それだけ言い残し、刹那さんは去っていく。



「……颯人、ねえ…。」


思わず名前を繰り返す。



話の続きが気になるが、きっと優という先程の女も、もう話してくれないだろう。


分からないのなら、調べればいい。




「…颯人。名前が分かれば、充分ですよ。」


思わず顔がにやけてしまう。



私は、すぐに家へ帰り、ありとあらゆる情報を集めました。


刹那さんの通っていた中学 塾 高校 女共のホームページやブログ なかなか手がかりはありませんでした。


けれど、一つだけ分かったこと。



刹那さんには、家族がいない。


【 光高校 36期生っ ★ 】

卒業生たちのありきたりな掲示板。

刹那さんほどの魅惑的な女性は、やはり珍しかったのでしょう。

男たちの卑猥な書き込み、女たちの僻み故の残虐な書き込みが溢れていました。


【刹那とヤリてー】

【俺も俺もwwあのクールさ堪らんww】

【ただ冷めてるだけの女。冷血女。うざい。】

【ヒールでグリグリされてー】

【刹那って教師と付き合ってたらしいよ。】

【はwwまじで?年上かよーヤリまくりじゃんww】


【教師ってか講師じゃね?塾の先生らしいよ。】

【y校塾の数学講師。】

【うち知ってるよ!刹那が迫ったんだって!】

【俺も迫られたいwww】

【家族いないから寂しさ紛らわせたかっただけだろ。】

【確かにwwてか家族いないからあんな冷めてるのか?】


最後の書き込みは10分前。こんなくだらない掲示板だが、情報を集めるには最適でした。

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