二 億 円


くるりと背を向け歩き出せば、悲鳴にも似た刹那の泣き叫ぶ声。



何がそんなに悲しいのか。


恋人がいなくなったこと?居場所が無くなったこと?


家族 友達 恋人…そして、主すらいなくなった貴女は、何を思って涙しているのでしょうね。




「約束( ルール )を守れない人間など、クズでしか無い…っ。」



ああ、このやり場の無い感情は何なのか。



「彌生っ…やよいぃい!! お願いっ…お願いだからぁ…っ!!約束も守るしもう勝手なこともしないからっ…彌生!!やよい ――! 」



耳障りな音。



どんなに嘆いても、一度過ちを犯してしまえば、それは決して消えてはくれないのですよ。



それは過ちを犯した側だけでなく、そうさせた側も。


罪とは、とても重く、深く刻まれてしまう『証』。『印』。



きっと、刹那は…私のことを忘れられないでしょうね。



「……私も、そのうちただのクズに成り果てるのでしょうね。」




そして、私も。二番目に愛した、貴女のことを。




忘れることは、出来そうにありません。




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