二 億 円



ギリッ


「いっ…!!」


昨日腕に刻まれた傷を思い切り掴まれる。




包帯には血が滲み、彌生様は満足そうに微笑む。




「残っているようですね。ですが…このままでは折角の名前が消えてしまいますね。」




考えるような素振りをし、ドアの奥を見やる。





「日向。頼んでおいた物、準備出来ましたか?」




ドクン 。




日向、少年…?




扉から入ってきたのは、真っ青な顔をした日向少年だった。私と目を合わさないよう下を向き、彌生様に液体の入った瓶のようなものを二つ、空の瓶を一つ渡す。







「余りはまた倉庫に戻しておきなさい。いずれ使うでしょうから。さあ、戻りなさい。」




コクリと頷き、出て行く日向少年。





そして扉が閉まる間際に見えた




泣きそうな顔




微かに聞こえた







「ごめんね。」という言葉。
< 48 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop