溺愛プリンス


俯いたままのあたしの頭の上に、篤さんはふわりと手を乗せた。



『……志穂ちゃんが、俺のことをすごく大事に思ってくれてる事、ちゃんと知ってたよ?
大切に、まるで家族みたいに思ってくれてる事』



家族……。


優しいそのぬくもりに誘われるように、そっと顔を上げる。
篤さんはあたしと目線を合わせるようにすると、ニッコリと微笑んだ。



『人間って不思議だよね。
時に、心と身体がすれ違う』


心と、身体?



『身体は正直だよ。自分が思っているよりも、ずっと』

『篤さん……』

『だから“今”、志穂ちゃんの中に誰がいるか、ちゃんと考えてみて欲しい』



“今”……誰がいるか。
頭の片隅に、出会った時からずっといる。

あたしから、離れてくれない。


でも……。
彼は、彼はダメだよ。



俯くあたしに、篤さんは『ね?』ってそう言って、優しく頭を撫でてくれたんだ。

大好きな、あの笑顔で。








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