溺愛プリンス


――――……
――……


あたしは篤さんのそばにいると、すごくホッとした。
心が穏やかになって、安心できた。



家族……か。

たしかに、そうなのかな。

あたしは、もしかしたら……自分でも気づかないうちに、篤さんに死んだお父さんの面影を重ねてただけかもしれない。



これからは、もっと優しい気持ちで、篤さんに会える気がする。
そう気付かせてもらえたんだから、篤さんに言わなくちゃ。


ごめんなさいと、ありがとうって……。






―――カラン!コロン!

その時、賑やかな鐘の音が耳に飛び込んだ。


ん?

見ると、そこにはテントの下で真っ赤なはっぴを着た商店街のおじさんたちがいた。


あ、そっか。福引だ。


「そういえば……」


前に茜に券をもらってたのを思い出す。
財布を開くと、たしかに商店街の福引券があった。

2枚。


せっかくだし、引いて行こうかな。


おばあさんたちが並ぶ最後尾に立った、その時。
ポケットの中でスマホが震えた。



「!」


もしかして……!


慌てて確認すると、それはさっき別れたばかりの茜だった。




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