溺愛プリンス
空港から連れて来られたのは、まるでお城のような大きなお屋敷だった。
門をくぐってから建物に着くまでに、車でどれくらい走っただろう。
信じられない……、こんなの映画の世界だと思ってた。
ここ、どこだろう。
車の中から思わず身を乗り出してしまう。
絵の具を垂らしたような、眩しい緑の芝生。
丸く、一寸の狂いもなく剪定された庭木の数々。
まるでそれらは、完成された1枚の絵画のようだ。
――バタン。
呆然としたまま車を降りる。
たった今来た道を振り返り、それから目の前の建物を見上げた。
ずいぶん古そうだな……古城、とでもいうんだろうか。
真っ青な空と、降り注ぐキラキラの太陽。
青々とした木々からは、小鳥のさえずりが聴こえてくる。
素敵……。
「ここが、ハルのお屋敷?」
独り言のようにつぶやいたその時、背後で誰かがクスリと笑う気配がした。
「ここは、ファブリック伯爵のお屋敷だよ」
え?
この声……、バッと振り向くと、その先にいたのは……。